ひとりぼっちの上司と私

 私は肩の力を抜いて、再びカップ麺に向き直った。静かに麵を啜りながら、須田さんの立場に少し同情する。

 我らがタイニーポケットの社長・歌代(うたしろ)さんは、元々別の大手おもちゃメーカーのデザイナーをしていた。

 しかし、大手企業ゆえにデザインの自由度が狭められてしまうことに不満を覚え、働きながらコツコツと資金を貯めて、自分で企業したそうだ。

 性格は気まぐれな天才肌で、美的センスやトレンドに対する感度は高めなのに、経営自体にはあまり興味がない。

 そこで、彼の代わりに須田さんが会社の財務関係を一手に担っているほか、社長に代わって大口取引先の対応をしたり、各部署間のあらゆる調整までしてくれている。

 うちの会社における、陰の功労者といっていいだろう。

 にもかかわらず、須田さんは一般社員からはあまり慕われておらず、私も正直なところ苦手な存在である。

 悪い人ではないけれど、得体のしれない怖さがあるのだ。この会社に来る前の経歴も謎に包まれているらしく、裏社会から来たのではないかという噂もまことしやかに囁かれている。

「東京、怖っ……」

 小さく呟いて、食事を再開する。

 勝手なイメージだとはわかっているけれど、東京に来てから一年が経った今でも、私はこの大都会に馴染めずにいるのだ。

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