ひとりぼっちの上司と私

 四分経ってから、蓋を剥がして液体スープを溶かし、わりばしでひと混ぜする。スープの表面に浮いた油が魅惑的に輝いた。

 商品名通りの背徳のきらめきだ。

 お洒落なカスタムヌードルも素敵だけれど、私にはこっちの方が性に合っている。

「いただきまーす」

 両手を合わせ、まずはスープをひと口。その濃厚な味わいに、ほうっと恍惚の息を漏らしたその時。ガチャ、とオフィスのドアが開き、廊下から誰かが入ってくる。

 眉根を寄せて険しい顔をしている長身のその人は、この会社の実質ナンバーツー。取締役兼、営業本部長の須田賢哉(けんや)さんだ。

「……なんだ、ここにもいないのか」

 須田さんは片手でドアを開いたまま、狭い商品企画部のオフィスをぐるりと見回して呟いた。

 細身ながら身長が180センチある須田さんには独特の威圧感があり、顔は整っているのに滅多に笑顔を見せない人なので、同じ空間にいるだけで緊張する。

「あの……誰をお探しなんですか?」
「社長だ。いいアイデアが浮かんだといって社長室を飛び出してから、所在が分からない。電話にも出ない」
「なるほど。こちらには一度もいらしてません」
「わかった。他を当たる」

 須田さんは疲れたようにため息をつくと、商品企画部を出て行く。

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