ひとりぼっちの上司と私
足取りも軽く、自宅マンションへの道を歩いていたその時、スーツのポケットでスマホが鳴った。
仕事の電話かと思い急いで確認してみると、弟の直哉からだった。一瞬硬くなった体からふっと力を抜いて、歩きながら電話に出る。
「俺だ。どうした?」
『兄貴、まだ会社?』
「いや、もうすぐ家だけど」
『よかった~。昨日、実家から荷物が送られてきたんだよ。食べ物もそうでないものもたっぷりと。おすそ分けしようと思ってマンションの前にいる』
思いがけない展開に、思わずぴたりと足が止まる。
直哉が家の前にいる……?
「今か?」
『そ。抜き打ちの生存確認も兼ねてるから急に来てみた。寒いから早く家入れてー』
「……わかった。急ぐからちょっと待て」
わが弟ながら、なんて間が悪いのだろう。まさか、泊まる気ではないよな?
いつも俺を気にかけてくれる弟に対して薄情だが、よりによってなぜ今日なんだ……。
マンションが見えてくると、入り口前の植え込みを囲うレンガに腰かけていた人物が、俺の姿に気づいて腰を上げた。小走りになって、弟のもとへ向かう。