ひとりぼっちの上司と私

「そ、そうなんだ」

 だからって、どうしてうちの会社の前にいたの? この辺りは企業のオフィスが多いし、駅前のハム公以外にめぼしい観光スポットはないけれど……。

「で、これからアイツらと飲みに行くんだけどさ。莉々も一緒にどう?」
「……えっ?」

 雄馬はなにを言っているのだろう。

 あんな別れ方をしたこともあり、元カレとはいえすでに他人だと思っているし、こっちへ来てから一度も連絡は取っていないのに。

「私たち、別れたよね……? 楽しくお酒を飲めるとはまったく思えないんだけど」
「別に、友達として誘ってるだけだ。変な風に勘ぐるなよ」
「いやいや、友達……?」

 私とあなたはそれ以下の関係でしょう、と喉元まで出かかったが、大人げない気がして飲み込む。

 わざわざ事を荒立てるような断り方をしなくても、今日の私には大切な予定がある。それを伝えればいいだけだ。

「悪いけど、今日は帰ってから上司とオンラインミーティングがあるの。一緒には行けない」
「なんだ……そっか。仕事ならしょうがないな」

 ゲームをするだけなのに〝オンラインミーティング〟とは、我ながらうまくごまかせたと思う。

 雄馬も納得した様子で頷き、「またな」と手を上げると仲間のもとへ引き上げていった。

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