ひとりぼっちの上司と私
【……そろそろ落ちるか?】
気が付けば、釣り竿をしまったヤスダさんがそう言っていた。
落ちる=ゲームをやめる、の意味だが、まだ始めてから三十分も経っていない。
チャットで反応するより先に、「えっ……」とリアルな声がこぼれた。
【本当は疲れてたんだろ。無理やり誘って悪かったな】
「ちが……」
慌ててチャットを入力し、送信する。
【実は今日、会社の前で元カレに会って】
取り急ぎ、要点だけを先に打つ。
【元カレ? 地元に住んでいるんじゃないのか?】
【友達と東京観光に来たらしいんです。その友達との飲み会に突然誘われて、もちろん断りましたけど、すごく腹が立ってきちゃって……】
思い出したら、また胸がむかむかしてきた。
雄馬はどうしてあんな風に私の前で笑えるのか、何度考えても理解できない
怒りをおさめるように、ゆっくり息を吐く。
すると、パソコンデスクの上に置いていたスマホが突然鳴り出して、電話の着信を知らせる。
「え。須田さん……?」
ドキン、と心臓がジャンプする。
今、ゲームの中で話している最中なのに、どうして電話をかけてくるの?
頭の中は疑問符でいっぱいだが、応答マークに触れてスマホを耳に当てる。