ひとりぼっちの上司と私

 翌日、社長の発案で始まり現在私の企画として進行中の『地元めしシリーズ~富山の海偏~』の着色サンプルが会社に届いた。

 商品企画部のミーティングテーブルに全種類を並べ、ああでもないこうでもないと感想を言い合う。

 ラーメン屋さんでのランチをきっかけに我妻さんと打ち解けてからというもの、他の先輩方とも徐々に親交を深め、今ではこの部署の一員としてしっかりと認識してもらっている。

「この調子なら、年明け二月の発売で問題なさそうだね。このサンプルをそのままを売り出してもいいくらい」
「でも、その前に社長と須田さんの鬼監修が入るからね。完璧に見えても、あのふたりはきっと粗を探してくるよ」
「それはそう。まぁ、あのふたりが厳しく見てくれるおかげで、発売してから不良品が発覚するってことはほぼないから、問屋からも販売店からも信頼されてるんだけど。……にしても、加納さんのアイデアいいわぁ」

 先輩たちの感想が、総じて高評価なのでホッとする。

 少し前までの私は、先輩たちの話に聞き耳を立てつつできるだけ存在感を消して、議事録係に徹していた。

 発言を求められただけで動揺し、なんとか絞り出した意見も不発に終わり、自己肯定感は地を這っていた。

 ……でも、今は違う。

< 113 / 205 >

この作品をシェア

pagetop