ひとりぼっちの上司と私
「ああ。偶然会社を出たところで加納と彼が見えて……」
須田さんがそこで不自然に言葉を止めた。私にちらりと視線を送り、一度目を閉じてなにか考える。
軽く首を傾げて次の言葉を待っていると、須田さんがふいにパッと目を開けた。
「と、言うのは嘘で」
「う、嘘……ですか?」
「ああ。会社にいる時、一緒にいた社長に外の天気を聞かれてふと外を見たんだ。そうしたら、お前が見知らぬ男と話しているのが見えた。昨日、元カレに待ち伏せされたという話を聞いたばかりだったから、もし今日も同じ状況なのだとしたら、相手の男が許せないと思ってな」
「そうだったんですね……。だとしたら、社長にお天気を伝えそびれちゃいましたよね。すみません」
「天気なんて、あの人が自分で確認すればいいだけだ。それより、エレベーターのタイミングが合わなくて階段で降りたから、駆けつけた時に息が切れてて、カッコ悪いことこの上なかっただろう。やっぱり俺はヒーローの柄じゃないな」
自嘲気味に言った彼は、いつかも見た時のように、耳がほんのり赤く染まっていた。
照れくさそうなその姿を見ていたら、これまで抑えてきた気持ちがあふれるような感覚がして、私はたまらずに口を開いていた。
「そんなこと、ないです。さっきの須田さんは、その……かっこ、よかったです。とても」
「加納……」