ひとりぼっちの上司と私
確かに、私は自然豊かで名産品も数多くある富山県の出身だ。この会社には生まれも育ちも東京という同僚が多いので、白羽の矢が立ったのだろう。
でも……本当に私なんかで力になれるのだろうか。
これまで私が発案した企画はボツを食らうか、運よく商品化までこぎつけてガチャマシンを置いてもらえたとしていも、中身のカプセルは大部分がはけないまま撤去……なんていう切ない結末が、数回あった。
だから、社長の期待に応えられる自信はあまりない。
「あの、情報集めのお手伝いや、地元民としての意見出しくらいはできますが、メインで企画を進めるのはもっと経験のある先輩にお願いした方が――」
気弱な声でそう言いかけた直後だった。オフィスのドアがバタンと勢い良く開き、社長も私もビクッと肩を震わせてドアの方を見る。
「――歌代社長。また逃げましたね?」
地の底から響くような低い声で凄んだのは、昼間も社長を探してここにきた須田さんだった。まるで借金の取り立てに来た闇金業者かと思うような迫力である。
社長はキャスター付きの椅子に座ったまま器用にそれを操り、あっという間に私の背後に隠れてしまう。