ひとりぼっちの上司と私
「お待たせしてすみません……!」
すぐに私の姿を見つけてくれた彼は、口元に優しい笑みを浮かべて左右に首を振る。
「いや、俺が早く来ただけだ。天気がいいせいか、老人のように早く目が覚めてしまって」
「あははっ。なんですかそれ」
クスクス笑って、走ったせいで乱れた前髪を整える。ふと気づくと彼が無言でこちらを見つめていたので、ドキッとした。
「須田さん……?」
「ああいや、ごめん。会社にいる時と少し印象が違うなと」
口元を手で覆った彼は、さりげなく私から視線を逸らす。ほんのり色づいた耳の色で、照れているのだとすぐにわかった。
そんな反応されたら、こちらも改めてデートの雰囲気を意識してしまう。
「と、とりあえず行きましょっか」
「ああ」
ぎこちなく駅の改札方面に歩き始めると、お互いの指先が偶然に触れ合う。
「ご、ごめんなさい」
「なんで謝るんだ。今日はデートなんだからむしろ……」
軽く指先が絡んだと思ったら、緩く手を握られた。須田さんが軽く身を屈め、私と目を合わせる。
「こっちの方が自然なんじゃないか?」
「そ、そう……ですね……」
甘くてくすぐったいやり取りに、私はすでにいっぱいいっぱいだ。
雄馬に会社の前で待ち伏せされた時も助けてもらった流れで手を繋いだけれど、あの時より私たちの距離は近くなっている。
触れている彼の手から伝わる温度も、今の方が高い気がした。