ひとりぼっちの上司と私

 ピッツェリアを出ると、次の目的地に向かって大通りをしばらく歩き、交差点を左に曲がる。

 これまでビルに遮られて見えなかった、特徴的な赤い鉄塔がいきなり右手の方向に現れ、初めて東京に来た時のような興奮を覚える。

「わっ。急にどーんって見えるんですね!」
「俺も久しぶりにこんなに近くまで来た。意外と大きいよな」

 緩やかな坂を上りながら、東京のランドマークであるタワーにどんどん近づいていく。巨大な塔脚のすぐそばまでやってくると、私は思い出したようにスマホを取り出して彼を見上げた。

「あの……せっかくなのでふたりで写真を取りませんか?」
「ああ、初デートの記念だしな。スマホは俺が持とう」

 腕の長い彼に撮影をお願いし、肩を寄せ合う。画面には、真下のアングルから見た東京タワーと共に、緊張気味の私たちの顔が映った。

「もう少し笑った方がいいんじゃないか?」
「す、須田さんこそ」

 そうして撮れたのは、やや硬さの残った笑顔で寄り添う私たちの姿。その仕上がりを見た私たちは目を合わせて笑った。

「初々しいにも程があるな」
「でも、いい写真だと思います」

 嘘ではない。このぎこちない空気感を含め、今しか撮れない瞬間だと思うから。

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