ひとりぼっちの上司と私
緑に囲まれた広場や、まるで空間がねじれたかのような独創的な建物やそして、展望台のある高いビルが特徴的な麻布台ヒルズ。
日曜日とあって、家族連れやあらゆる年齢層のグループ客、そして、幸せそうなカップルともたくさんすれ違った。私たちもはたから見たらそう思われているかもしれないが、誤解されて困ることもない。
彼の方はどうかわからないけれど、私は存分に恋人気分に浸りながら、広場に点在するパブリックアートを鑑賞したり、ショッピングを楽しんだり。
そうこうしているうちに日が落ちて、私たちは高層階のレストランへ向かうため、エレベーターを探して商業フロアを移動していた。
お昼は気軽なお店にフラッと入ったけれど、夜は人気レストランを彼が予約してくれている。
「――須田くん?」
ふと、すれ違った女性が彼の名を読んだ。彼が歩みを止めて振り返ると、男性と腕を組んで歩いていた女性が、スッとその手を離して瞳を輝かせる。
「瑠璃川……」
「やっぱり……! 偶然ね」
どうやら知り合いらしい。ご挨拶しなければと思いつつも先に彼の反応を見たくてパッと顔を上げる。
見つめた先の須田さんは、まるで突然極度の緊張に晒されたように、頬を強張らせて息を呑んでいた。
瑠璃川さんという女性の親し気な態度とは対照的だ。
彼女はいったい……。