ひとりぼっちの上司と私
不穏な空気に気を揉んでいるうちに、瑠璃川さんは目の前まで歩み寄ってきた。
須田さんと同じくらいの年齢だろうか。緩く巻かれた長い髪を耳にかけた彼女は、濃い目のリップが塗られた唇で微笑みを作る。
「久しぶり、元気そうね。今日はお休みなの?」
「……ああ」
答える声には覇気がないのに、私の手を握る力は強くなった。なんとなく、今の彼は不安なのではないかと感じる。
「もう、相変わらず口数少ないんだから。今だから言うけど、須田くんが辞めちゃった時、私結構ショックだったんだからね? 片想いしてたの、全然気づいてなかったでしょう」
――と、いうことは瑠璃川さんは、遠山物産時代の同僚……?
彼女の片思いどうこうも引っかかったけれど、それ以上に須田さんのことが心配になった。
これ以上瑠璃川さんと話していて大丈夫だろうか。見るからに顔色が悪くなっている。
「おいおい、こんなところで問題発言をするのはやめてくれよ」
先ほど彼女と腕を組んでいた男性が、軽く嫉妬したような口調で近づいてくる。
男性が身に着けている服やバッグ、腕時計などはどれも上質そうで、須田さんや瑠璃川さんより少し年上に見えた。