ひとりぼっちの上司と私
……なんだか、嫌な感じ。これ以上彼女の相手をする必要があるとは思えなくて、私は彼の服をきゅっと引っ張った。
「須田さん、そろそろ予約の時間が」
「……ああ、そうだな。俺たちはこれで失礼する」
瑠璃川さんとその彼氏らしき人に頭を下げ、私たちはその場を後にする。
私は彼のことが気がかりで、あまり人気のない通路に差し掛かると、須田さんの横顔にそっと問いかけた。
「大丈夫ですか? もしご気分が悪いなら、ご飯は食べずに帰っても……」
須田さんがぴたりと足を止め、私を見下ろす。それから軽く周囲に視線を巡らせたかと思うと、いきなり私の後頭部に手を添えて、ぐっと自分の胸に押し付けた。
突然のことに、ドキン、と胸が鳴る。
「俺なら、大丈夫だ」
静かに告げる須田さんの声は、やはりいつもより少し弱々しい気がする。
本当に大丈夫だろうか。強がっているのでは……?
「夜景、見たいんだろ? 俺も見たいから行こう」
「……はい」
そっと体を離した彼は、手を繋ぎ直して歩き出す。
聞きたいことはまだ色々あったけれど、須田さんがそれを拒んでいる気がして、結局なにも尋ねられなかった。