ひとりぼっちの上司と私
「加納……」
「とにかく、今日は気をつけて帰ってください。それでまた明日、会社で会いましょう?」
最後に彼の両手を取り、励ますようにギュッと握る。須田さんはようやく視線を上げて私を見つめたものの、そこに宿る光はとても弱々しかった。
「……わかった。また明日、な」
「二日酔いに注意ですよ。お水をたくさん飲んでくださいね」
「ああ」
その会話を最後に、私はスッと手を離し、改札の方へ向かう須田さんを見送る。彼は一度もこちらを振り返ることなく、ホームへ続く階段を上っていった。
そして翌日、私たちは当然会社で顔を合わせた。
始業開始の少し前、休憩スペースでカフェラテを買おうとしている彼を見つけたので、自分から駆け寄って挨拶した。
「須田さん、おはようございます。あの、今週のどこでもいいので、お話をする時間を作ってもらえませんか?」
「ああ、展示会の準備ならもちろん相談に乗る。ありがたいことに、ブースの広さは大手と変わらない面積で確保してもらってるからな。展示物として飾るものと、実際にガチャとして回せるもの。その選定と、せっかくだからイベントらしい仕掛けがあっても――」
「あの、違います……! というか、もちろん展示会のご相談もしますが、私の言っているのはプライベートの話の方で」
「悪いが今週は時間がない」
検討してくれる様子もなく、ズバッと断られてしまった。