ひとりぼっちの上司と私
しかし、彼の鬼上司ぶりは今に始まったことではないから耐性がついているし、今回は態度がおかしい理由だってなんとなくわかっている。簡単にあきらめる私ではないのだ。
「では、来週はいかがですか? ダメなら再来週でも構いません」
「……年内はしばらく忙しい」
「須田さん……!」
私が焦れたような声を出すと、彼は少し気まずそうにして腕時計に目を走らせる。その針は、ちょうど九時半を過ぎたところだった。
「今は業務時間内だ。ここでは仕事の話にしてくれ」
じゃあ、いつ、どこでならいいんですか……?
私の不満げな顔には気づいていたとは思うけれど、彼は淡々と自動販売機で飲み物を買うと、営業部の方へとスタスタ歩いて行ってしまった。
その後も彼は仕事の話以外は徹底的に避け続け、鬼上司の仮面をなかなか外してくれなかった。
そして一週間が経ち、二週間が経ち……イベントの準備は順調に進んでいたものの、私の恋にはまったく進展がないまま、忙しい日々が過ぎていく。
「加納さんお疲れ。これ、差し入れ」
昼休み、時間を無駄にしたくなくてオフィスのテーブルでささやかにコンビニのおにぎりを齧っていたら、通りかかった我妻さんがフィルムに包まれたお菓子をポンと置いてくれる。