ひとりぼっちの上司と私
「お、お疲れ様です、社長」
我妻さんの緊張したような声を聞き、社長はほんの少しだけ、笑みに甘さを含めた気がした。
もしかして、ワガママな四十代男性って……!
ふたりの関係を察して思わずワクワクしてしまったが、社長はすぐに元の冷静さを取り戻して言う。
「お疲れ様。ふたりとも、須田を見なかった?」
「須田さん? ……私は見てません。加納さんは?」
「今日はまだ一度も……」
私たちの返事を聞いて、社長は困ったように腕を組んでため息を吐く。
「まったく、僕が行方をくらますと怒るくせに、自分はフラッといなくなるんだから困るよ。少し前まではもう少し楽しそうに仕事をしていたのに、昔のアイツに戻ってしまった感じもするし」
社長の言葉を聞いて、胸がずしんと重たくなった。やっぱり、誰の目から見ても須田さんの様子は変わってしまったんだ。
膝の上にあった手を、ぎゅっと握る。
「……私のせいかもしれません」
「えっ?」
「どうして加納さんのせいなの?」
気づかわし気に私の顔を覗く我妻さん。社長も怪訝そうに眉を顰め、すぐそばまで歩み寄ってきた。
私は二週間前に須田さんと出かけた際、遠山物産で彼と働いていた元同僚の女性に会ったこと、そして彼女から言われた数々の言葉をふたりに明かした。