ひとりぼっちの上司と私

「その人、感じ悪。ワンチャン須田さんの転職先が遠山物産より魅力的だった場合、今の彼氏から乗り換えようと思ってた感じがビシビシするんだけど」

 嫌悪感を露わにしたのは我妻さんだ。社長も彼女と目を合わせて頷く。

「僕も同感だ。しかし、須田の転職先がこのちっぽけな会社だと知って、興味を失った。計算高いくせに思慮の浅い女性だね。……でも、どう考えても悪者はその女性じゃないか。加納さんが罪の意識を感じることなんてないんじゃないの?」
「それが、私……明かに弱っていた須田さんがハグを求めてきたのを、拒否してしまったんです。さらに『現実逃避のお手伝いをしたいわけじゃない』とも言ってしまって。あの時は正しい行動をしたような気がしていましたけど、彼が欲しかったのは正しさなんかじゃないですよね……。今、おふたりと話をしていたら段々そう思えてきました。須田さんの気持ちを優先して、受け入れるべきでした」

 あの時の記憶を反芻すればするほど、後悔が膨らんでいく。

 深くうなだれる私の背中に、我妻さんが手を添えて優しくさすってくれる。

「加納さんの気持ち、なんとなくわかるよ。きっと、寂しさのはけ口みたいにされて触れられるのは嫌だったんだよね。純粋にあなたを求めてくれたなら、きっと素直になれたのに」

 私のもやもやした気持ちを言語化され、ますます胸が切なくなる。冷静な顔で聞いていた社長も、私に優しい眼差しを向けた。

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