ひとりぼっちの上司と私
「すでに起きてしまったことに対して〝こうすべきだった〟とくよくよするのはもったいないよ。須田の態度も良くないとは思うけど、残念ながらあの男は頑固だから、先に前を向けるのは加納さんの方だと思う。蟻地獄みたいな過去にとらわれている彼を助けるにはどうすればいいか、一緒に考えよう」
「社長……」
さすがは須田さんと長年付き合っているだけのことはある。彼の性格を熟知したうえでくれたアドバイスには、説得力があった。
「私も手伝うよ。鬼上司の彼ががこれ以上弱ってしまって、もしも仕事に支障をきたすなんてことがあったら、社長がしっかりしてないこの会社は潰れちゃうもん」
我妻さんがユーモアたっぷりにそう言って、悪戯っぽく笑う。
社長はやや心外そうに眉をピクリとさせると、テーブルに手をついて我妻さんにずいっと顔を寄せる。
「ちょっと。その〝しっかりしてない社長〟に入社以来一途に想いを寄せ、僕の部屋の恋みくじガチャにひっそりと自分の想いをしたためたミニブックを紛れ込ませていたのは誰?」
「そ、その話は口外しない約束じゃ……!」
我妻さんが真っ赤になって慌てる。恋みくじのミニブックに想いを……?
もしかして、私も社長室にいたあの時の?