ひとりぼっちの上司と私
頭の上に手を掲げ、帽子をかぶるような動作をする。
彼が私の案に乗ってくれたこともうれしいけれど、久しぶりにまともな会話ができたことに感激して、声も動作もつい大きくなる。
「……やるな。ちなみにお前はどれにするんだ?」
「私はですねぇ……」
顔を突き合わせて同じ書類を覗き、当日の流れを一緒に確認する。
彼は穏やかな目をした彼は、瑠璃川さんたちと鉢合わせするより以前に戻りつつあるようだ。
あの日以来、彼が自分の周囲に築いていた堅固な壁に、ようやく少し隙間ができたみたい。
展示会の日、彼と一緒に仕事を成功させることができたら……その時は、素直な気持ちが伝えられる気がする。
仕事の話に集中するふりをしながら、私は密かにそんな想いを募らせていた。
それからイベントの日まで、クリスマスやお正月などのイベントがあったけれど、私はとくに変わらない毎日を過ごした。
タイニーポケットはカレンダー通りお正月休みがあったけれど、実家の両親には『年明けに大事な仕事があるから』と説明し、富山には帰らなかった。
たまには顔を出さなきゃという思いもあったものの、上京を決めた時は、雄馬だけでなく両親も結構反対していた。今でこそ放っておいてくれているけれど、私の仕事を認めてもらったとは言い難い。
だから、なにか土産話になるような成功を収めてから、両親のもとに帰りたかったのだ。