ひとりぼっちの上司と私
図面を見ずに指示を出した方が早いので、ブースのレイアウトは細かな装飾も含め、完璧に頭に入れてきた。
おかげで想定していた時間よりも早く設営は完了し、社員たちを一度バックヤードに下げ、休憩を取らせる時間ができた。
ここでも大手企業には専用の控室が用意されているが、俺たちは数社の小さな企業が肩を寄せ合って、共用の控室を利用している。
折り畳み式の会議テーブルにパイプ椅子が並び、在庫のカプセルが大量に詰まった段ボールが保管された雑然とした空間となっているが、イベント開始まで英気を養うために、少しは椅子に座っていてもらう時間が必要だ。
俺はあらかじめ総務部が用意しておいてくれた飲み物を段ボールごとテーブルにドンと乗せると、タイニーポケットの社員たちに向けて声をかける。
「どれでも好きなの持っていけ。ただし、ひとり一本だ」
元々会社の雰囲気が和気あいあいとしているため、社員たちは口々にお礼を言いながら、飲み物を取りにやってくる。
その中には加納の姿もあり、誰よりこのイベントにワクワクしているような瞳をして、箱の中からカフェラテを一本取り出した。