ひとりぼっちの上司と私

「これって、須田さんの分はあるんですか?」
「余分に用意してあるから、俺が取っても問題ないはずだ。しかし、最後でいい」
「ダメですよ。須田さんは誰より忙しくしてたんですから、ちゃんと水分を取って休まないと」

 そう言って、手に持っていたカフェラテを俺に手渡す加納。

 部下に世話を焼かれているようでは上司の立場がないが、元々この会社に厳しい上限関係はない。そんなところも、俺が無理なく働けている理由だった。

「ありがとう。お前はどれにする?」
「……今日はこれ飲んでもいいですか?」

 彼女が遠慮がちに箱から覗かせたのは、細い缶のエナジードリンク。

 今日はハードな一日になりそうだからと、総務部の担当者が何本か入れておいてくれたのだろうか。

 加納に飲ませるのは気が引けて、つい『やめておけ』と口にしそうになったが、俺は声を発する前に直前で口を噤んだ。

 ……俺が過去に胃をやられたのは、別にエナジードリンクのせいというわけではない。仕事を中心としたあらゆるストレスやプレッシャーに押しつぶされた結果、徐々に体が蝕まれていったのだ。

 健康な彼女なら、過剰摂取にさえ気を付ければいい。

 こういう飲み物には、実際の効果とは別に、やる気を引き出してくれる効果もあるから。

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