ひとりぼっちの上司と私

 午前十時の開場時間が一時間後に迫ってくると、俺たちタイニーポケットのメンバー一同は少々緊張していた。

 しっかり準備をして、魅力的なブースづくりはできた。紹介する商品にも自信がある。皆がお揃いで羽織っている社名入りの法被(はっぴ)もいい感じだ。
 
 それでも、やはり会社の規模も知名度も高いとは言えない。大手企業のブースにばかり来場者が集中するのではという不安が、どうしても潰しきれないのだ。

 最悪の場合、控室に積み上がった在庫の段ボールをそのまま会社へ持ち帰らなければならないなんてことも……。

「須田さん」

 ブース内にある商談用のパイプ椅子に腰かけ、思案していたその時。すぐそばで加納の声がして、俺は彼女の方を振り返る。

「ん? なんだ……って、おい、ちょっと待っ!」

 彼女は問答無用で、俺の頭にずぼっと被り物を嵌める。今日の展示会では、俺と加納、そしてその他にも数人の選ばれしメンバーが、これをかぶったまま接客する役割を命じられている。

 ひとりずつそれぞれに違った被り物だが、俺の担当はマグロ。たい焼きを彷彿とさせる横向きの丸っこい魚体、その中央に、顔を出す丸い穴が空いている。

 顔から下に変化はないので、だいぶシュールな見た目になっていることだろう。

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