ひとりぼっちの上司と私
「……まだ早くないか?」
被り物を使った集客方法に賛成はしたものの、だからといって恥ずかしくないわけではない。
だから、開場時間ギリギリまでは人間の俺でいるつもりだったのだが……。
「『ブースには愉快な海の仲間たちが……?』という文言を添えて各メンバーの動画を繋げて、SNSで宣伝するんです。顔を出す必要はないので、後ろ向きの動画を取らせてもらってもいいですか?」
「動画……? なにをしたらいいんだ? 言っておくが、俺は歌ったり踊ったりするつもりはないぞ」
「いえいえ、むしろなにもしなくていいです。鬼上司が嫌々かぶっている感じにした方が、マグロはそういうキャラクターなんだって特徴ができるので。では、後ろから撮りますねー」
彼女の意図する宣伝方法がイマイチよく理解できないまま、俺はただ椅子に座り続ける。
顔は写っていないはずだが、後頭部を撮影されているのも落ち着かない。
「オッケーです! じゃあ次は、反対に須田さんが私を撮ってください」
「もういいのか。撮れと言われても、俺にはなにがなんだか……」
「後ろからカメラを回して、十五秒くらい録画していただくだけで大丈夫です。宣伝文やリンクは後から足してもらうので」
戸惑っている間に、社用のスマホを託される。彼女が目の前で、自分の被り物を頭に装着した。