ひとりぼっちの上司と私

 例の宣伝動画が功を奏したのかはわからないが、タイニーポケットのブースは待機列の整理が必要なほどの盛況ぶりだった。

 加納は【最後尾】と書かれたパネルを持って常に来場客に向かって大声で呼びかけており、まだまだその数は増えそうだ。

 俺は商談の合間を縫って、足りなくなった景品の在庫を取りに行くため、台車を押してバックヤードへ急ぐ。きりきり舞いの忙しさだが、胸の中は清々しかった。

「あ、マグロの社員さんだ~! 動画で見るより背が高い! 一緒に写真撮ってもらえますか?」

 ブースに戻って一段落した頃、展示の鑑賞を終えたらしい女性ふたり組に声を掛けられた。

 展示品や購入した商品の撮影は自由だが、被り物の社員に対する撮影ルールを定めるのを失念していたと、今になって後悔する。

 期待に応えたいのは山々だが、ここは慎重になった方がいいだろう。俺や社長はともかく一般社員に対応させるは酷だし、この被り物は顔が隠れない。

「申し訳ございません。社員のプライバシーを守るために、撮影はご遠慮ください」
「そっか。そうですよね……」
「あの、朝の動画みたいに後ろ向きでもダメですか?」
「ああ、それでしたら構いませんよ」

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