ひとりぼっちの上司と私
「こんにちは。ちょっと興味があってお邪魔してみたの」
俺の姿を上から下まで眺めていた彼女が、ふと、俺が抱えている被り物に目を留める。それから、微妙な笑みを浮かべた。
「……なんなの? それ。もしかして、彼女が被っているような変な帽子をあなたも?」
信じられない。趣味が悪い。子供だまし。
声に出されなくても、彼女がそう思っているのが伝わってくる。
加納はこの場の空気を和ませようとしたのか、自分の被り物を頭から外して瑠璃川に説明する。
「よく見るととても凝っているんですよ。富山の魚介類がモチーフなので私のはただのイカではなくホタルイカで、このラメは光る体を表現していて――」
「やっぱり来るんじゃなかったわ」
ため息交じりに言った瑠璃川。その目が見ているのは、加納の被り物ではなく、俺の顔だ。
「この間も思ったけれど、須田くんがこんなに落ちぶれてしまった姿は見たくなかった。若い頃の私には、見る目がなかったのね」
「瑠璃川、俺は――」
俺が反論しようとしたのを制するように、加納が一歩前に出る。