ひとりぼっちの上司と私
「あの! 瑠璃川さんは、ここにいるお客さんの顔が見えないんですか? 思い思いに展示を見たり、ガチャガチャの前でワクワクしている人たちの顔が」
呆気に取られていると、彼女は怒りのせいなのか、肩を上下させながら続ける。
「須田さんも私たちも、お客さんたちのああいう笑顔が見たくて毎日仕事をしているんです。それを、〝落ちぶれた〟だなんてひと言で片付けてもらいたくありません……!」
「……加納」
俺も似たようなことを言おうとしていたのだが、先を越されてしまった。
しかし、馬鹿にされた俺よりも彼女の方がよほど怒っているのを見て、言葉にならない感情で胸が熱くなる。
――彼女はそんなにも、俺を大切に思ってくれていたのだ。
「そうはいっても、笑顔だけでご飯は食べていけないでしょう? 私たちの会社は確かに直接お客様の顔が見えるわけではないけれど、言い換えればプロジェクトの規模が大きいってことなの。もちろん、動くお金の額もね」
「私は仕事の大きさの話はしていません。もちろん、どちらが優れていると言うつもりもありません」
「じゃあ、なにが言いたいのよあなた」
加納が支離滅裂なことを言っているかのような言い草で、瑠璃川が鼻を鳴らす。それから彼女たちが火花を散らすような視線を交わした後、先に口を開いたのは加納の方だった。