ひとりぼっちの上司と私
「須田さんは、遠山物産を辞めて正解でした。大きな物事にばかり気を取られて、人の心の機微を見逃したり、自分の発言が相手を傷つけるとわかっていて、あえて口にしたりする人にならずに済んだので」
そのセリフで、これまで常に余裕を漂わせていた瑠璃川の顔色が一気に変わった。
目を血走らせているのは、怒りのせいか、それとも図星を指された悔しさからか。
どちらにしろ、これ以上ここにいるのは得策でないと判断したらしい。彼女は興味を失ったように肩から力を抜き、俺たちを嘲るような笑みを浮かべた。
「……もう付き合っていられないわ。こんな学園祭じみたイベント」
「学園祭って――」
「加納。もういい。……後は、俺から話す。ずっと矢面に立たせてしまってごめんな。俺は本当に、もう大丈夫だから」
再び反論しようとした彼女をなだめ、俺は瑠璃川の正面に立つ。
彼女は怪訝そうにしていたが、俺は構わず話し出した。
「瑠璃川が俺をどう思おうと勝手だが、強がりでもなんでもなく、俺は今とても幸せなんだ。ここにいる彼女や一緒に働く皆のお陰で、少しずつそう思えるようになった」