ひとりぼっちの上司と私
自由気ままだが、遊び心を決して忘れない歌代社長、俺が鬼のように振る舞ってもついてきてくれる、営業部の部下たち。縁の下で会社を支える、管理部門の社員たち。
常に流行のアンテナを張り巡らせ、SNSを駆使して商品を宣伝してくれる、広報部の面々。
そして、タイニーポケットの心臓ともいえる、商品企画部の加納、我妻といった有能なクリエイターたち。
個性あふれる仲間たちに囲まれて、会社を成長させていく。それはとても難しい作業だが、だからこそ挑戦する価値がある。
俺は傍らに持ったままのマグロの被り物を撫で、ふっと微笑んだ。
「この会社には、遠山物産とは違ったやりがいとおもしろさがある。瑠璃川とは立つ土俵がまったく違うが、俺は俺でもっと上を目指して精進するつもりだ。もしかしたら、お前のところで扱っている商品を購入することもあるかもしれない。その時は、お互いにプロの営業同士。誠実な対応をよろしくな」
もう少し緊張すると思ったが、俺はひと息にそこまで言い終えた。
瑠璃川を見ていても、自分の忌まわしき過去を思い出させる存在――という意識はすでに霧散し、単なる元同僚としか思わなかった。
過去があるから、今の俺がある。本当の意味で、そう思えるようになったのだ。
「……ほんっとうに馬鹿だわ」