ひとりぼっちの上司と私
瞬きを繰り返すうち本当にうとうとしてきて、心地よく夢に誘われそうだったその時。床に置いたバッグの中から、スマホが鳴っているのが聞こえてくる。
波のさざめきをイメージしたその電子音は、ゆうメロのアプリ内でメッセージを受信した際、デフォルトで鳴るようになっている着信音だ。
数秒鳴った後で静かになったが、すぐには眠れそうになくなってしまったので、仕方なく体を起こす。
バッグからスマホを出して床に座り直し、ゆうメロアプリにログインする。オープニング映像の後でホーム画面に切り替わると、メールボックスに新着メッセージの数を表す『1』の表示があった。
「あ、ヤスダさんから……」
『ヤスダさん』とは、一カ月ほど前に親しくなったユーザーのハンドルネームだ。
ゆうメロ歴一年弱の私よりもっと初心者で、最近までアバターの着替えさせ方も知らなかった。オンラインゲームに疎く、チュートリアルの進め方さえよくわかっていなかったらしい。
そんな彼に、基本的なゲームの操作や豆知識を教えてあげた縁で親しくなった。
ちなみに〝彼〟というのはあくまでゲーム内で彼が男性のアバターを使用しているからで、実際に男の人なのかどうかはわからない。