ひとりぼっちの上司と私
ふと気が付くと、商談スペースでバイヤーと思われる人物を前にしている社長が、泣きそうな顔でこちらを見つめている姿が目に入る。
……ああ、そういえばあの人はこういう交渉事が苦手だった。
俺は手のかかる社長の助けに入るため、すぐに商談スペースへと向かった。
「それでは、展示会の成功を祝して乾杯!」
「かんぱーい」
イベント撤収後、社長が予約してくれたレストランのパーティールームで打ち上げが行われた。
会社で通常業務をしていた社員たちも合流し、およそ三十名が一堂に会してグラスを掲げ、ワイワイと宴会が始まる。
俺も雰囲気だけは楽しんではいるものの、飲み物はウーロン茶にしていた。元々酒はほどほどにしか飲まないし、飲みすぎて失敗した記憶が、やや直近の記憶にあるからだ。
「須田さん、お茶のお代わりいりますか?」
隣の席から、加納が声をかけてくる。
だいたい部署ごとに席を決めているのに、なぜ俺と彼女が隣同士なのか……。それはイベントに参加していた社員たちの中に、俺たちと瑠璃川のやり取りを見ていた者がいたからだった。