ひとりぼっちの上司と私

『須田さんと加納さんはどうぞ遠慮なく! お隣同士で!』

 強引にそう勧められ、俺たちはやや気まずく思いながらも隣同士で食事をしている。同じように、社長と我妻も並んで社員たちに冷やかされていた。

「いや、まだ大丈夫だ。お前は楽しんでるか?」
「そうですね。それなりに……」

 イベント中の元気はどこへやら。ぎこちなくそう言った彼女が、ビールのグラスに口をつける。

「疲れたか?」
「いえ、楽しかったです。それに……」
「それに?」
「これは仕事とは関係ありませんが、須田さんが瑠璃川さんに堂々と言い返した時、とてもスカッとしちゃいました。私みたいにただ噛みつくんじゃなくて、もし今後また会うことがあったら、営業同士正々堂々とやろうっていう気概が……その。とと、とても、カッコよくて」

 最後は蚊の鳴くような声だったが、俺の耳にはちゃんと届いていた。言ったそばから恥ずかしそうに頬を染める彼女に、胸が早鐘を打つ。

「……そうか。しかし、以前瑠璃川に会った後の俺は、相当カッコ悪かっただろうからな……プラマイゼロというところだろう」
「そんなことありません! マグロの被り物も似合っててかわいかったですし」
「それを言うならお前のホタルイカだってかわい――」

 そこで我に返り、自分たちがとてつもなく恥ずかしい発言をしていると気づく。

 酒を飲んだわけでもないのに火照る首筋に手を置き、昂り気味の感情をなだめる。

< 183 / 205 >

この作品をシェア

pagetop