ひとりぼっちの上司と私
「……なぁ、加納」
「はい」
「この後、時間あるか? お前とふたりで話したい」
大勢の飲み会では、彼女に大切なことが話せない。
だからといって、日を改められるほど心にゆとりはなかった。今日一日で何度も彼女への気持ちを自覚し、言わないままでは想いが溢れてどうにかなってしまいそうなのだ。
「実は……私も同じことを思っていました。須田さんに話したいことがあって」
彼女もまた、なにか決心したように俺を見つめる。
もしかしたら、同じ気持ちでいてくれているのだろうか。しかし、そうだとしても伝えないことには始まらない。
俺はチラッと腕時計を見る。打ち上げが開始してから一時間も経っていないが、焦れったくなって彼女の手を取った。
「須田さん……?」
「社長に言って、先に抜けさせてもらおう」
「えっ」
戸惑う彼女を連れて社長に挨拶をしに行くと、彼は我妻と目を合わせて意味深に笑った。
「遅かったじゃないか。きみたちはもっと早く抜け出すと思ってたよ」
「ふたりとも、今日は本当にお疲れ様でした。加納さん、また平日のランチの時にでも話聞かせてね」
社長も我妻も、俺たちの微妙な関係には気づいているようである。加納は俺の隣で真っ赤になっていた。