ひとりぼっちの上司と私
「社長と、未来の夫人の許可も得たことだし、行こう。お先に失礼します」
「お、お先に失礼します……!」
俺たちはぺこりと頭を下げ、手を繋いでパーティールームを出る。
平静を装ってはいるが、今にもこの胸を突き破って出てきそうなほど、彼女への想いは大きくなるばかりだ。
クロークに預けていたコートを身に着けて店の外に出ると、頭上には星空が広がっていた。冬で空気が澄んでいるせいか、都心にしてはたくさんの星が綺麗に見える。
というか、こんな風に空を仰いだのは何年ぶりだろう。俺はいつだって、過去を引きずって下ばかり見ていた気がする。
「さて。……どこへ行くかな」
白い息を吐き出し、とりあえず駅の方向へ歩き出しながら、隣の加納を見下ろす。
寒さで鼻の頭を赤くした彼女が、「うーん」と真剣に考える。
「ゆうメロの中だったら、私たちの定番は波止場ですけどね」
「確かにな。しかし、リアルの波止場はとてつもなく寒いだろう」
「ですね。どこか適当なお店に入りますか?」
「それか……うちにでも来るか?」
静かに話ができる場所として自然と思い浮かんだので、俺はそう口にした。
しかし、あからさまに頬を赤くして戸惑った顔をする加納を見て、とんでもないことを口走ってしまったと気づく。