ひとりぼっちの上司と私

「まさか。かわいいって意味です」

 私はそう言うと、彼に肩に手を置き、背伸びをしてチュッと彼にキスをした。

 彼と同じように、私もこんな自分は初めて知ったかもしれない。

 男の人に対して〝かわいい〟って感情が湧いて、自分から口づけしたいと思うなんて。

「……家に呼んだのは間違いだったかもな」

 ふいに、低い声で呟いた彼が、私を壁の方へ追いやる。体で優しい檻を作った彼は、長い指で愛おしそうに私の頬を撫でる。

「ここでは俺たちの社会的立場なんてあってないようなものだし、万が一暴走した場合に、止めてくれる人もいない。唯一頼れるのは自分の理性だが、お前がどんどん壊しにかかってくるし……」

 苦笑しながら言った彼は、するりと私の頬から首筋を撫でた後、耳に唇を押しあてる。

 ちゅっと軽いリップ音が立った後、彼の悩ましい吐息が肌を撫で、ぞくぞくとした感覚が全身に走る。

 朝からこんなにとてつもない色気を醸し出されたら、心臓が持たないよ……。

 甘く濃密な空気に包まれて、なんとなく流されてしまいそうになっていたその時。

 不意に、彼の部屋のインターホンが鳴った。

 私たちは我に返り、気まずさを堪えつつ目を合わせた。

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