ひとりぼっちの上司と私
「止めてくれる人、いましたね」
「そのようだな。……しかし誰だ? 朝っぱらから」
賢哉さんは私の髪を軽く撫でてから、リビングダイニングに向かっていく。
私もなにげなくその後に続き、ダイニングの壁にあるモニターを彼が操作するのを離れた場所から見ていた。
「……直哉?」
『おはよー兄貴。朝食の配達サービスだよん。一緒に食べよー』
スピーカーから聞こえてくる平和な声に、賢哉さんがガクッとうなだれる。
もしかして、弟さん?
仲がいいとは聞いていたけれど、こんな風に突然マンションに来たりするんだ。
挨拶したいけれど、私はこんな格好だしどうしよう。
「今、取り込み中だ。下まで取りに行くから待ってろ」
『ええ? 俺、また部屋に入れないの? もしかして、ユリコさんと一緒とか?』
「うるさいな。お前の言う通り――って。今、〝ユリコ〟と言ったか?」
モニターの前にいる賢哉さんが、思わずと言った感じで私を見る。どうして、今ここでその名前が出るのだろう。
弟さんがゲームの制作者だから、賢哉さんが話した? でも、彼の反応を見ているとそれだけではなさそうな気がする。