ひとりぼっちの上司と私
「ユリコさんが悪い人じゃないのはすぐにわかったし、なんなら、兄貴の友達になってほしいと思うほどいい人だった。兄貴がプライベートで孤独なのがずっと気になっていた俺としては、ヤスダとユリコさんをぜひ会わせなきゃと思ったわけよ」
彼は、私と賢哉さんに見立てて両手の人差し指を立て、その手をゆっくりと近づけてぶつける。
あのオフ会の提案にそんな裏があったなんて、思いもよらなかった。
すべては、直哉さんが賢哉さんの孤独を解消してあげたいと思うが故だったんだ……。
「びっくりです。色々。あのオフ会で私たちがふたりきりになったのは、偶然じゃなかったんですね」
「お前な……そういうことはもっと早く教えろ」
直哉さんは私たちの反応に悪戯っぽい笑みを浮かべ、「ごめんごめん」と両手を合わせる。
「でも、こうして幸せそうなふたりを見てると、俺のお節介も無駄じゃなかったんだなって思えるよ。お邪魔虫はそろそろ帰るから、これ、ふたりで食べて」
直哉さんは席を立ち、隣の椅子に乗せていたカフェの紙袋をテーブルの上へ置き直す。
「いえ、もう少しゆっくりなさってください」
「ああ。食べるものがふたり分しかないなら俺がなにか買って来るから、お前たちで先に食べてろ」
私と賢哉さんで彼を引き留めたものの、直哉さんは困ったように笑って遠慮する。
「いやいや、俺、そんなに野暮な男じゃないって。――あ、最後に一個だけ」