ひとりぼっちの上司と私

 突然踵を返した彼は、すっかり立ち直った賢哉さんを心から嬉しそうな顔で見つめて言う。

「今度、一緒に実家帰ろう。兄貴を心配してたのは、俺だけじゃないからさ」
「ああ、元々そのつもりだった。昨日、大きな仕事をやり遂げたばかりなんだ。……彼女と一緒に」

 噛みしめるような言葉と共に、大きな手がポンと肩に乗せられた。彼の信頼が伝わってくるようで、胸が温かくなる。

「了解。あーあ、俺もブラコンを卒業したことだし、そろそろ真剣に自分のパートナー探さないとな~」

 直哉さんはちょっぴり寂しそうに言うと、手をひらひらさせて私たちに別れを告げる。彼が玄関を出て行く音がした後、私は直哉さんが残していった紙袋を覗いた。

「野菜がたっぷり挟んであるベーグルに、ミネストローネ。飲み物はカフェラテ。賢哉さんの好みと健康をすごく気遣ってくれているのが伝わってきます。優しい弟さんですね」
「ああ。俺にはもったいないくらいの弟だ。……でも、直哉だけじゃない。俺の周りには、親切なお節介を焼いてくる人間ばかりだ。恋人も含めてな」
「お節介って」
「褒めてるんだよ。おかげでこんなに幸せだ」

 袋の中身を取り出しながらそう言った彼は、穏やかに微笑んでいた。その顔を見ていたら私まで満ち足りたような気持になって、笑顔も伝染する。

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