ひとりぼっちの上司と私
もはや職業病で、店内のあらゆるものをすぐにミニチュアにしてカプセルに詰める想像をしてしまう。
もちろん、商品化できるのはごく一部だし、その中でも売れるものはもっと絞られてしまうけれど。
「かっ、加納さん……!」
五分ほどで戻って来た我妻さんは、なぜか興奮気味に頬を赤く染めていた。席に着くなり私の方へぐっと顔を近づける。
「まだ、極秘情報だから耳を貸して」
「は、はい」
「罪悪麺コラボ、向こうの会社から許可が出ました……!」
ほとんど吐息ばかりの小声だが、我妻さんの興奮が最高潮に達しているのが伝わってくる。
私が展示会イベントの準備に追われている間、複数の案件を担当していた我妻さんが、特別力を入れて社長にプレゼンしていた企画だ。
同じく罪悪麺ファンの私としても、まさか自分の会社でコラボ商品を手掛けられるなんて夢のようだ。
「すごいです……! 乾杯しましょっか。お冷ですけど」
「うんうん! しちゃおう、お冷だけど」
とはいえここは居酒屋ではないので、店や他のお客さんの迷惑にならないよう、ささやかにグラスをぶつけるにとどめる。
それでも、企画が形になる前のワクワク感を、ふたりで存分に分かち合った。
これだから、タイニーポケットの仕事はやめられないのだ。