ひとりぼっちの上司と私
賢哉さんは、わだかまりを抱えていたのは自分さんだけだったというのがわかって、胸につかえていたものがなくなったと言っていた。
彼のそんな話を聞いていたから、私も取り急ぎ実家に電話をかけ、母と話だけはしたのだ。
《全然帰ってこないけどちゃんと食べてるの? 仕事は?》
『大丈夫だよ。こないだ体重が一キロ増えちゃってたくらい。仕事も楽しいし順調だから、心配しないで』
《それならいいけど……あんた、こっちで彼氏と別れてから出会いの方はどうなの? 仕事をするのもいいけど、将来のこともちゃんと考えて――》
母の言う将来とは、結婚のことだろう。
未だに価値観の変わらない母にちょっぴりうんざりしつつも、今の私に小言を言われる筋合いはないと思い、素直に伝えたのだ。
『考えてるよ。付き合っている人、いるし』
《……ええっ? そうなの? だったら早く紹介しなさい。どんな人? 年は? 職業は?》
『同じ会社の人。まだ付き合い始めたばかりだから、富山にまで連れて行って親に合わせたりしたら、プレッシャー与えちゃうよ。時期を見てまた連絡するから待ってて』
《そんなこと言って、本当は悪い人に騙されてるんじゃないの? お母さんはあんたが心配でね――》
『勝手に彼を悪い人にしないで。とにかく、私はうまくやってるから心配も詮索も無用。じゃあね、お父さんにもよろしく』