ひとりぼっちの上司と私

 仕事にも東京での生活にも自信を持てるようになったから連絡したにもかかわらず、賢哉さんのように実家との関係もすんなり改善……とはならず、私は母との一方的に電話を切ったのだった。

 それから、結局まだ一度も連絡していない。

「だったら、ご両親はさぞ心配しているんじゃないか? どこの馬の骨とも知れない男に、娘が騙されているんじゃないかと」

 賢哉さんにも、地元の空気感や年配世代の古い価値観については話してあるので、彼の予想はおおむね合っていた。

 しかし、だからといって彼を連れて行ったら、今度はやれ結婚はいつだ子どもはどうするというデリカシーのない質問が飛び交うに違いない。

 そんなに先のこと、彼だってまだ考えていないだろうし……。

「言わせておけばいいんですよ。子どもにだってプライバシーってものがありますし、うちの両親を安心させるためだけに、賢哉さんが犠牲になることはありません」
「犠牲だなんて思わない。お前を育ててくれたご両親に挨拶をするのは当然だ。富山の雪は、いつ頃溶けるんだ? その頃に休みを合わせて一緒に行こう」

 唐突な提案に、目をぱちくりさせる。

 最近帰ってないから少し記憶が曖昧ではあるが、故郷の景色を思い浮かべながら答える。

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