ひとりぼっちの上司と私
「年にもよりますが、山の方でなければだいたい三月頃には落ち着いていると思いますが……」
「そうか。じゃあ、来月の連休の頃にご挨拶に行きたいと、ご両親に連絡してくれ」
「ちょ、ちょっと待ってください。急だし、簡単に行ける場所でもないので申し訳ないです」
「莉々」
賢哉さんが私の名を呼び、抱きしめる腕の力をギュッと強める。密着したまま顔を上げると、彼の真剣な眼差しとぶつかった。胸が、ドキンと鳴る。
「俺は真面目にお前と付き合っている。たとえ実家が遠くにあろうと、ご両親の考えが自分たちと少し違ったものであろうと、挨拶しないままでいいとは思わない。お前がどう考えているかは知らないが、俺にとっては、生涯一緒にいたいと思っている相手を育ててくれた人たちだ。感謝だって伝えたい」
「賢哉さん……」
〝生涯一緒にいたい〟って――そんなの、まるで。
「……悪いな、愛が重い男で」
私の頬を、軽く曲げた指で撫でながら苦笑する彼。感動で胸が詰まってしまった私は、潤んだ瞳を隠すようにギュッと彼に抱きついた。
「そういうの、誠実って言うんですよ……。私が大好きな、あなたの一番の魅力です」
耳元で、ふっと笑う彼の吐息がかかる。それは甘くて優しくて、私を一瞬で幸せな気持ちにさせてくれる。
「それは光栄だな。で? 来月富山に行く件はどうする?」
「連絡しておきます。……誠実で優しくて背が高くてカッコいい最高の彼氏が挨拶に行くよって」
「……ちょっと待て。それはハードルを上げ過ぎじゃないか?」
「いいんです。全部事実ですから」
本人の前で盛大にのろけ、焦った顔をする彼の鼻の頭にキスをする。
ひとりぼっちの東京で見つけた恋は、これからもずっと、私のかけがえのない宝物だ。
Fin.


