ひとりぼっちの上司と私
前に話していたグミをモチーフにした商品のサンプルをチェックしていた彼女は、ぱらぱらと企画書をめくったかと思うと、少し悩みながらも言った。
「これさ、社長案件だから、直接歌代社長に見てもらってくれる?」
ぱさ、と手元に書類を返されながら、私は思わず固まってしまう。
社長案件……。そういえば、商品企画部ではその単語をたびたび耳にする。
先日のように社長が突然企画部を訪れて情熱的に新商品のアイデアを語り、「じゃ、よろしく」と言い残して、私たち社員がプチパニックに陥る企画……それが社長案件だ。
いつもなら私は事務処理的な部分をちょっとお手伝いするくらいで、企画書を担当するのは先輩方だった。
先輩方はそれでも社長の期待に応え、ヒット商品を次々生み出しているけれど……。
「そんなに怖がらなくて大丈夫だよ。社長は須田さんと違って鬼じゃないし。それより、このグミのパッケージ、めっちゃよくできてない?」
「そ、そうですね。すごく素敵だと思います」
我妻さんに見せられたサンプルは、タイニーポケットらしいかわいらしさと新しさの両方があり、ますます自分の企画に自信がなくなってくる。
でも、見せないことにはなにも始まらない。ダメな部分があれば、もう一度考え直せばいいはずだ。
緊張しながらオフィスを出て、同じフロアの一角にある社長室へと向かう。
ドアをノックすると「はーい」と期限のよさそうな声で返事があり、少し緊張がやわらいだ。