ひとりぼっちの上司と私
「失礼します。加納です」
声を掛けながら中に入ると、社長は窓際のデスクではなく、壁際に並んだ歴代商品のガチャの前にいた。
レバーを回すカチカチという音の後、コロン、とカプセルが出てくる。
はたから見たら遊んでいるようにしか見えないが、社長にとってはなにが出てくるわからないワクワク感を常に胸に刻み込んでおくための、大切な儀式らしい。
カプセルを手の中で弄びつつ、社長がこちらを振り向く。
「やあ、いらっしゃい。僕になにかご用?」
「はいっ。あの、社長からアイデアをいただきました、ご当地の名産品ガチャの企画書を作成してまいりました」
「ああ、あの企画書か。すぐに見るからそこに座って」
社長は私の手から企画書を受け取ると、部屋の手前側に設けられた、お洒落な応接スペースに移動する。社長室というよりまるで自宅のような温かみを感じる、北欧風のソファとテーブルのセットが置かれている。
そもそもこの部屋全体にあまりビジネス感はあまりなく、壁に沿って並んだガチャマシンといい、社長のデスクに散らばるデザイン画といい、趣味が全開のアトリエのような雰囲気なのだ。