ひとりぼっちの上司と私
マスクをつけた男女が、頬をくっつけて自撮りしている仲睦まじ~いショット。女性の方に面識はないけれど、男性の顔はマスクを着けていてもすぐに誰なのかがわかった。
「雄馬……彼女、できたんだ」
下條雄馬。地元で就職したばかりの頃に友達の紹介で付き合い始め、転職と上京が決まった頃に別れた二歳上の元カレだ。
地方銀行で営業をしており、愛想も要領もいい器用な人。家族や友人からも『いい男を捕まえたね』と言われることが多かった。
上手くいっている頃はそれなりに幸せだったけれど、私が『東京の会社に転職を考えている』と相談した頃から、関係がぎくしゃくし始めた。
そのぎくしゃくを修復しないまま、私がちょくちょく東京に出向いて実際に転職活動をし始めると、会うたびケンカが絶えなくなった。
『お前、映画とかドラマの見過ぎなんじゃないのか? 東京に行ったからって、なにもかもがキラキラしてると思ったら大間違いだぞ。こっちで仕事があって、家族も友達も、俺という恋人だっているのに、どうしてわざわざ苦労する方へ行きたがるのか理解できない』
『そりゃ、こっちにいた方が楽だとは思うよ。でも、このまま地元に残ってぼうっとしてたら、自分で人生の選択肢を狭めちゃう気がするの。多少の苦労をしてでも、世界を広げたいの』
『世界って、別に国を出るわけでもあるまいし……ただの自己満足だろ』
『やってみなくちゃわからないでしょ……!』