ひとりぼっちの上司と私

 雄馬は一貫して、私の上京には反対だった。その理由が、たとえば私と離れたくないとか、遠距離恋愛を続ける自信がないとか、そういうものだったら私も胸が痛んだだろう。

 でも、彼は私の東京行きを『世間知らず』とか『子どもの家出程度のワガママ』と散々馬鹿にした。

 そのくせ、『じゃあ、俺は誰にメシ作ってもらえばいいわけ?』と口走った時には、どっちが子どもなんだと呆れてしまった。

 お互い実家暮らしだったため料理を作る機会はあまりなかったが、雄馬の中では、結婚適齢期になったら私と結婚し、これまで実家の母親に甘えていた炊事洗濯掃除を、丸ごと私に押し付けるつもりだったらしい。別れる直前は、会話の端々からそんな空気を感じた。

 そして、この人とはもうダメだと決定的に感じたのは――タイニーポケットへの就職が決まったと、彼に報告した時だ。

『ふうん、ガチャガチャの会社……ね。お前、しょうもない食玩とかミニチュアとか好きだもんな。しかし、好きだからって、わざわざ東京の会社に入ってまで作る側になるかね、普通』
『雄馬の中には、少しも私を応援してくれる気持ちはないの?』
『ないね。……俺の中にあるのは、彼女ガチャ外れたって気持ちだけだ』

 彼がそう吐き捨てた瞬間、これまで彼と一緒にいて楽しかった思い出や過ごした時間の全部を、ぐしゃぐしゃに丸めてゴミ箱に捨てたくなった。

 どうせ地元を離れて新しい生活を始めるのだから、未練がない方がちょうどいいのかもしれない。

 そう思ってここまでやってきたけれど、彼との後味の悪い破局は、今でも私の心に影を落としている。

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