ひとりぼっちの上司と私

「今度は彼女ガチャ成功してよかったねー……」

 写真の中で幸せそうにする彼に向って呟くと、スマホをスリープ状態にして画面を暗くする。

 SNSを眺める意欲も、食事を続ける気力もすっかり失せていたけれど、だからといって他にやることもない。ゆうメロはゆっくりプレイしたいゲームなので、こういう隙間時間には向かないし……。

 それでも、私の心のよりどころは現状それしかないので、大して味のしないサンドイッチを黙々と口に運びながら、再びスマホを手に取る。

 なにげなくゆうメロを起動させると、公式運営からのお知らせの他に、新着メッセージが一件。

「ヤスダさんだ。昨日の深夜に届いてたの気づかなかった」

 指を動かし、内容を確認する。

【夜分にすみません。先日は大層なお品をいただきましてありがとうございました。ユリコさんに着替え方を教わったにもかかわらず結局いつも同じ服で活動してしまうのですが、今後はお洒落の方も楽しみたいと思います。それでは、また時間が合えば波止場で釣りでもしましょう】

 大層なお品……もしかして、こないだメッセージに付けた、アバター用の白シャツのこと?

 操作ひとつで完結する気軽なプレゼントだったのに、まるで桐箱に入った贈答品でもやりとりしたかのごとき文面に、思わずふっと笑いが漏れる。

「波止場で釣り……いいかも」

 彼が今夜ログインするかどうかはわからないけれど、もしもゲーム内で会えたらこの約束を叶えたい。

 そのためには、社長にダメ出しされた企画書をなんとかしなくちゃ。

 動機はちょっぴり不純とはいえ、ヤスダさんのおかげで仕事へのやる気が戻ってきたみたいだ。

「……がんばろ」

 ぽつりと呟き、サンドイッチの最後のひと口にかぶりつく。

 よくよく味わってみると、ちゃんと美味しいサンドイッチだった。

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