ひとりぼっちの上司と私
オフ会の誘い――side賢哉
「……よしっ」
力強く呟き、コントローラーを膝に置く。
三カ月前に半信半疑で始めたゲーム、夕波メロウ。ログインしている時間の長さは日に日に増え、今ではほとんど毎日仕事の後で入り浸っている。
デスクの上のモニターに映っているのは、自分の容姿とは似ても似つかない、ちんまりした四頭身のアバター『ヤスダ』。
リアルでは会社で『鬼上司』的な扱いを受けているため、せめてゲーム内では優しい人物になりたくて、顔の造形はどことなく間の抜けた感じにしている。
そんなゆるい見た目のヤスダだが、今の彼はどこか誇らしそう。というのも、両手いっぱいに巨大なマグロを抱えているからだ。
隣で一緒に釣りをしていた女性アバターが、拍手のアクションでヤスダを讃えてくれる。
【ヤスダさんすごい!】というチャットの吹き出し付きだ。
緩いウエーブのかかった長い髪、女性アバター専用の機能で目元や口元の色が鮮やかにメイクされた、おおらかな印象の美人。
彼女のプレイヤー名は『ユリコ』という。
実際の彼女がどんな人物かは知る由もないが、ユリコさんは俺にこのゲームの基本を教えてくれた恩人である。