ひとりぼっちの上司と私
 相当な偶然だが、彼の目的地もここだったらしい。

 上司が食事するのと同じ空間でオフ会なんて、ちょっと……いやかなり居心地が悪いかもしれない。

 悪いことをしているわけではないが、なんとなく後ろめたさを感じて思わず視線を落とした時だった。

 彼が右手に持っているスマホに、見慣れた画面が映っているのが視界に入る。

 私がさっきヤスダさんと連絡を取り合っていたゲームアプリ『夕波(ゆうなみ)メロウ』のメッセージ画面だ。

 今回オフ会をするきっかけにもなったスローライフ系ゲームで、年齢制限こそないものの、プレイヤーは日々の仕事に疲れ切った社会人が大半なのだとか。

 ここで彼と顔を合わせたのって、もしかして偶然じゃない……?

 私は半信半疑で、彼に問いかけた。

「あの、ヤスダさん……ですか?」
「ということは、加納がユリコさん……?」

 私と須田さんは、ぽかんとお互いを見つめ合ったまま固まる。

 店の扉越しに賑やかな喧騒が聞こえてくるが、私たちの間はしんと静まり返り、なんともいえない気まずさが漂い続けた。


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