ひとりぼっちの上司と私

【もしかして、チュートリアルの貝殻を探してますか?】

 そんな俺に、親切に話しかけてきてくれたのがユリコさんだった。

 自分の別荘周辺のマップはプレイヤーの許可がなければ入れないが、共有マップというものがあり、そこで彼女と出会った。

 これは後から彼女に聞いた話だが、初期アバターが身に着けている原始人のような服で出歩くプレイヤーはあまりおらず、みんなゲームを始めてすぐになんらかの服を手に入れ、着替えを済ませるらしい。

 にもかかわらず、原始人のままで出歩く俺の見た目から、彼女は俺を初心者中の初心者に違いないと確信し、手を差し伸べてくれたようだ。

【はい。しかし、拾っても拾ってもチェックボックスに印がつかなくて……】
【この辺りの海は岩場なのでありません。砂浜に行けばありますよ】

 初めて知る情報だった。海は海であり、砂浜と岩場の区別があることさえ俺は知らなかったのだ。

【そうだったんですか! じゃあ、今まで自分が拾っていたのはなんだったんでしょう?】
【この辺に落ちていたものなら、ただの石ですね……売ってもあまりお金にならないので、捨てて大丈夫です】
【ただの石……】

 そんな情けないやり取りに脱力しつつも、彼女のお陰で無事に貝殻を手に入れた俺は、チュートリアルを無事に攻略し、海辺の街の正式な住人になれたのだった。

< 33 / 205 >

この作品をシェア

pagetop