ひとりぼっちの上司と私
『ははっ。ごめん、真面目に石を拾ってたのにそれじゃないって突っ込まれる兄貴、想像できた』
「あの石、やたらと落ちてるんだからなにか使い途を考えてくれ。そうすればあの日の俺も浮かばれる」
『了解。ってか、前よりホントに元気になったみたいで安心したわ。実家の親にも俺から連絡しとく』
「……ああ、ありがとう。頼む」
せっかく親が大学までの学費を出してくれたというのに、〝商社勤めの息子〟ではなくなってしまったことに負い目があり、実家は都内にあるにもかかわらず、俺は両親と疎遠になっている。
といっても、両親は決して世間で言われているような毒親というわけではない。むしろ愛情深く、優しい人たちだ。
それなのに、職場のプレッシャーに負けて会社からドロップアウトし、これまで育ててくれた両親へ恩返しができなかったのが無念だと思ってしまう。
今も決して無職ではないが、第一線からは逃げてしまったような、そんな後ろめたさが拭えないのだ。
実家に帰っても、両親の前でどんな顔をしたらいいのかわからない。
せめて無事で生きていることだけは知らせておきたいので、こうして直哉に伝言を頼んでいるというわけだ。
「……寝るか」
弟との通話を終えた俺は、パソコンの電源を落として、デスク脇のベッドに寝転ぶ。